君のいた夏

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どうやって民宿まで帰ったのだろう?僕は眠れなかった。 蒸し暑いのもあったが、そのせいだけではないのは明白であり、認めなければならない出来事だったからだ。 彼女は一体僕に何をしたんだろう?僕は彼女に一体何をしたんだろう? 朝…霧が立ち込める中、僕はチン○丸出しで寝ているゲン君を横に見ながら、浜に向おうとした。 すると、階段で彼女がポツンとしゃがんでいた。 「あれ?どうしたの、早いね」 初めて僕の口から流暢にでた言葉だった。 「海…見たいなって。今日皆帰るんだもんね。」 「一緒に行こうか!」僕らは親達に内緒で海に向かって散歩した。たった3日の間往復したのに、慣れた道を歩くように僕らは歩いた。 浜に着いて僕らは波打ち際にいき、じゃれた。 手の甲がチョコン!とぶつかると僕は彼女の手を握っていた。 彼女は僕の顔を見た。僕は彼女を見ないようにした。君を見なくても手の温かさから、僕と同じ想いが伝わってきていた。 「…また来年も逢えるよね…来るでしょ?」 「ああ、また来年…」僕は手を強く、強く握った。 そして僕らは僕らの帰る場所に帰って行った。 翌年…小学五年生の僕はまた海へと行ったが、その海に彼女と彼女の家族の姿はどこにもなかった。 理由は大人の事情というヤツだった。 僕らはまだ幼く、車もない、親という存在なしでは生きていけない小さな世界の住人なのだ。 ~完~
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