Ⅰ―Ⅲ 面影を追いかけて

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 呆れる男子生徒の隣を通った時、男子生徒はまた口を開く。 「おい智和。知らないうちに変なことに巻き込まれてないか?」 「そんなのいつものことだ」 「だけど、今回は一つ間違えば厄介事になるぞ。わかってるだろうな?」 「わかってる」 「お前に関してないと思うが……何かあったら連絡しろ。長谷川先生が直々だったら尚良い」 「覚えとく」  素っ気なく答えた智和は部屋を出る。  そこには千夏と、順番待ちをしていたエリクがいた。  口元だけ緩ませて笑いかけるが、それが不気味さを漂わせて何か危険なものを感じさせている。智和は反応も示さず横を通り過ぎた。 「……どうも苦手だ」  どんな諜報員でも嫌なものだが、エリクに関しては特にその気持ちが強かった――ただし諜報員と接触したことはない――。
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