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「だとしても時間は守られるべきだ。せめて五分」
「強情だな。だけど無理だ。これ以上この部屋に留まったら妨害行為と見なすぞ」
「やってみろ。諜報科の連中がまともにやれるのか一度試したい」
「トモ君!」
瑠奈の叫び虚しく、智和の右手がズボンのベルトに装置されているナイフへと伸びる。
その一瞬の挙動で男子生徒は妨害行為ではなく戦闘行為と見なし、装備していた伸縮警棒を振り払う。
「待って!」
だが、警棒を握る男子学生の右手は一挙動で警棒を伸ばしただけで止まった。
ナイフに手を伸ばした智和の右手を、ララが掴んで制止させていた。
「お前……」
「……もういいわ。必要なことを聞けたから充分よ。出ましょう」
手を離し、静かに部屋を出たララを追うように瑠奈が足早に出ていく。
警棒を縮めて戻した男子生徒が溜め息を漏らし、冷や汗を拭って口を開いた。
「……お前、マジで抜くつもりだったろ」
「そんなつもりはない。壁際じゃ振り抜けないしな」
「でも蹴りとか入れる気だったんだろ」
「ああ」
「洒落にならない」
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