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――血と硝煙が体に染み付き、見渡す限りの死体の山がそこにあった。
遠い遠い異国の地で、少年が初めて目にした戦争の本質。紛争の本質。闘争の本質。
そこには容赦も、慈悲も、優しさの欠片もなく、ただただ残酷で、無惨で、残虐しかない。
虐殺。殺戮。破壊。
宗教の為。民族の為。政治の為。肌の色が違う為。金の為。浄化の為。独立の為。革命の為。欲の為。生きる為。
“どうでもいい”ようなものを含め、数え切れぬ理由の為に人は戦い、死ぬ。
まるで世界の理とも言うように、ただ殺し合う。
殺しても殺しても、人は増える。永遠に続く死の生産。少年は初めて実感した。
隣人だった者達が殺し合う。親が子を殺す。黒い肌の者が白い肌の者を殺し、白い肌の者が黒い肌の者を殺す。軍人がテロリストを殺し、テロリストが軍人を殺す。独裁者が国民を殺し、国民が独裁者を殺す。
人が人を殺す。
「世界は暴力に満ちている」
先輩が言った言葉を横で聞き、少年は静かに頷く。
「暴力はなくならない」
「そうだ。そしてIMIは暴力の象徴として、烏のように、人々から蔑まれなければならない。俺達がしてきた今までは、否定されなければならない。よく胸に刻め智和。殺すってことは、こういうことだ」
また少年は静かに頷く。
頷くことしかできなかった。
何故だか、悲しくも悔しくも怒りもないのに、自然と涙が溢れてきた。
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