始まり

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ジリリリリー-…… 目覚ましの音で目が覚める。 いつもの何も変わらない日常。 今日も平凡な朝をむかえる まだ寝ていたい体をを無理矢理起こし 顔を洗うため洗面所に足を向ける。 「あ、おはよー」 兄の嫁、沙弥(さや)さんが挨拶をしてきた。 「おはようございます」 ここは実家。 実家には父親、母親、兄夫婦、そして俺の5人で住んでいる。 「おはよう。今日お前仕事は?」 「休み」 話しかけてきたのは 兄の浩司(こうじ) 「あ、ちょうどよかった。久々に兄弟水入らずでどこか出掛けよう!!もちろん、俺が運転するし、飯おごるよ」 機嫌良く俺に話しかけてくる。 「えぇ…ダルい。休みの日に何で兄貴とでかけなきゃならんの」 「はぁ?休みの日にデートできるような彼女のいないお前を不憫に思ってる優しい俺にダルいだと?」 …ムカつくが否定できない。 彼女がいなかった訳じゃない。 最近別れたばかりなだけだ。 言い返さず、平然を装って顔を洗う。 その態度が気に入らなかったのだろう。 兄はそんな短気な性格だ。 「しかも?たしか浮気された挙げ句に振られたんだよな?」 ここまで言われるとさすがに… 顔を洗うのを一旦やめて 兄を睨み付けた。 「ちょっと…浩ちゃんやめなよ。優ちゃんに酷いよ!!」 俺を庇う兄の嫁。 沙弥さんは本当に優しい。だが、俺はもぅ21歳。 名前は優希(ゆうき) 優ちゃんはやめてほしい… 「…とにかく、今日は俺と出掛けるぞ。決まりだから。わかったな」 2歳しか離れてないのに 昔から兄は偉そうだった。 「わかったよ」 そして逆らえないヘタレな俺…かっこわるい… 「姉さんはいかねーの?」 「今日は兄弟水入らずなんだよ。だから沙弥はお留守番」 「…うん」 この返事からすると 沙弥さんも初耳だったみたいだ。 なんでこんな兄貴にこんな優しくてよくできた嫁がいるのか不思議になる。 この2人みたいになりたかった。 沙希(さき)を思い出す。 俺の何が足りなかったのかな… 別れてからまだ1年しかたっていないが まだ吹っ切れていなかった。 「優ちゃん…」 「んぁッ」 少し自分の世界に入りすぎていた。 気付いたら兄はいなくなっていて 沙弥さんしかいなかった。 おまけに変な声まで出してしまった… 「浩ちゃんをお願いね」 少し寂しそうに笑った。
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