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「フレイムブレット!」
先走るレイ。
千紗のためと、翔太との約束のために、自分の記憶の恐怖にも打ち勝って、ただ生き残ることだけを見つめる。
ただそれは、少し早計だった。
無数の弾丸がリョネルを狙うと、
「待ってあげたのに……“千手の紫閃”」
リョネルは姿を消し、
「いきなり撃つとは礼儀を知らなさすぎますね」
突如目の前に現れて槍を振るった。
後に残るのは、紫色の奇跡のみ。
槍の軌道上にいた体は、トラックに小石がぶつかったかのように吹き飛ばされ、近くの民家の一階を壊して突き進む。
「清水!」
「人の心配をしている場合ですか?」
リョネルと目が合って、龍一は必死に回避した。
ギリギリ避けきって、違和感に気付く。
「なんで今俺は避けられたんだ……?」
「それだ」
華那が龍一をかばうようにして立ち、目を逸らさずに言う。
「さっきの“千手の紫閃”という言葉……あれがおそらく発動キーだろう。言った後、あのバカげた力を出す術が発動する。が、あまりに強すぎる出力のために、長くは出せないんだろうな」
「なるほどな」
「そういうわけだから、龍一は逃げろ。翔太もだ。ここは私が……あれ?」
武田翔太の姿が、ない。
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