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「お前を死なせたりしねえよ」
リョネルと対峙する二人のところでは、龍一が華那を押しのけた。
「何をバカな……」
「華那も恩人で、大切だから、な。限界拒絶」
龍一の中に、あるはずのない余力が湧き上がった。
「だが、お前には生き残ってもらわなければ……」
「んなこたあどうだっていいんだよ。俺はただ、華那に生き残って欲しい……サード」
龍一は右手の陣に炎を注いだ。
力は有り余るほどにある。
「何を言って……」
「こんな気持ちになったのは初めてだ。俺はこの気持ちを表す言葉は知らないけど……まあ、何だっていい、今から俺に触るなよ?」
「……龍一」
「ダークボディ!」
叫ぶと、龍一の全身が真っ黒に……いや、真闇に染まった。
そこだけ穴が空いたように見える、暗い体。
「美しい絆ですね」
「そう見えるなら嬉しいな」
「美しい絆を引き裂くというのは……ゾクゾクします」
「そのために待ってたのか。変態だな」
「ふふ、なんとでも」
リョネルと龍一の戦いが始まる。
それに戸惑い、どうにも決断のできない華那は、ふと、壊された民家から二人、翔太とレイが出てくるのを見つけた。
「意外と生き残れるかもね。高温インクリースの謎が、さっき解けたんだ」
「すげーな。ところでレイ、余力は?」
「うーん、あんまり」
「翔太、レイ!」
二人は声の方に目を向け、翔太はハッとした。
自分が怖がる間も、自分が憤る間も、自分が無茶をする間も、ずっとずっと冷静で、ずっとずっと、最終的には自分が犠牲になることまで冷静に見つめていた女術師、だ。
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