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彼女は自分すらも駒にして、冷静に最良の結果を探っていた。
そしてそれは今も変わらないのだろう。
翔太は自身の青さ、浅慮を恥にも思う。
同時に、この人に死んで欲しくないとも思った。
全体の戦局から見れば、華那の死によって好転する状況もあるかもしれない。
いやきっと、歴戦の華那の判断なのだから状況はよくなるのだろう。
少なくとも、華那を生かそうと努力する場合より。
それでも、捨てられはしない。
華那の身を犠牲に自分が生き残ったら、きっと自分は後悔する。
どれだけ大義名分にまみれようとも、もう戦線に立つこともできず、強くなる努力などもってのほか。
レイの前で胸を張って立つことはできないだろう。
だから、
「華那さん、あなたも死なせない」
だから、
「千紗もきっと生きてる」
「何を……」
だから、
「絶対に、全員で生き残りましょう。あなたを捨てて、俺は逃げられない」
戦う。
死ぬだろう、という考えはもう、レイとともにした。
ここで死んでも後悔はないよう、伝えるべきことは伝えた。
後は最後まで、自分に恥じないように生きて、生きて、生き延びる。
まっすぐな想いは、華那の信条こそ揺るがさねど、意志を少し、変えた。
なんとしても説得して逃がそうと思っていた華那は、諦めてこう言った。
「結局、お前らは最後まで人の言うことを聞かなかったな」
「ですね」
四人。
同じ方向を向いて、戦う。
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