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「レイ来て!」
叫び残すと、凄まじい勢いで民家に突っ込んだリョネルを追って、翔太はライソクで駆ける。
体勢を立て直す前が勝負。
強力な術が発動状態を維持できないのなら、今こそ術の隙を突く時だ。
ただ、もちろんそれはリョネルも分かっていて。
やすやすと隙をつけるはずもなく、リョネルは立ち直って、槍を振って翔太を迎え入れた。
今度は翔太が、自分自身の速さで傷つく番――の、はずだった。
が、完璧なタイミングで迎え撃ったはずのリョネルの槍は、外れた。
よけられるはずのない速さで、まるですり抜けたかのように、翔太の動きは止まらずにリョネルへ。
真っ赤な炎を纏った拳が、リョネルの腹部にめりこむ。
「ぐふあっ……」
息とともに、血が口から漏れた。
翔太の“小技”が、リョネルに対して抜群の効果を発揮したのだった。
その苦しみも終わらぬ間に、次の攻撃が襲う。
「はあっ!」
レイの蹴り。
それも、足の裏や足の甲ではない。
民家の天井に頭をつかえているリョネルの顔面の真ん中へ、膝がめりこむ。
鼻は折れ、目は眩み、それでも止まらない。
「翔太っ」
翔太の背中を踏んでもう一度跳んだレイは、回し蹴りを首に決めた。
瞬間、脚の表面全体から炎が吹き出す。
新しい術ではない。
これがレイの、完成した高温インクリースだ。
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