凪に舞う勝利

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それ以来、リョネルは少年の下についた。 少年の瞳は特に嫌いだった。 橙の瞳は真実をごまかす。 だから目を閉じた。 いつか少年に勝つために、ほとんど閉じて戦う練習をした。 しかし、唯一開かなければならない時があった。 “千手の紫閃”本来の力を発揮した時、その強すぎる衝撃に備えなければ腕が飛ぶ。 目を開ければ橙の瞳。 目を閉じれば自滅。 すぐに少年への勝ち目がないことに気付いた。 しばらくして、相棒が出来た。 自分と同じく背の高い、なぜか全身黄色づくめのアース。 二人は最強だった。 危ない戦いなどなかった。 力を蓄えて、もっと強くなった。 しかし、戦いは楽しくなくなっていった。 ある時アフリカで、強い虹炎術師と戦った。 勝ったのか負けたのかよく分からないが、とにかくリョネルは不満で、自分の強さを再証明したかった。 飛び出すと、自由だった。 相棒はいないが、それでもいい。 ずっと作ろうと思っていた武器も作った。 しかし、腕が減った。 そして今、死にかけている。 少年に。 橙の炎を使って。 もう。 止まらない。 必要がない。 後は要らない。 大嫌いな少年のため。 勝手につけられた名前にかけて。 勝つ。 「秒限解除、分限設定……いや……限界はもう、要らない」
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