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リョネルの様子が明らかに変質した。
“千手の紫閃”の詠唱を終えた時とはまた違う、もっと荒々しい雰囲気。
強い圧力に圧倒されていると、リョネルの閉じた目が紫の炎で覆われた。
「やべっ……」
変化に戸惑っている場合ではないかもしれない。
目に何かしたということは、視力を取り戻そうとしているということだろう。
成功されるとその瞬間、勝率が暴落する。
今すぐにも勝負を決めにいくべき、と考えて差し支えない……はずだ。
だが動けない。
様相を変えたその直前のセリフが、この変化が危険だと物語っている。
とるべき手は、先ほどのリョネルと同じ。
強い術の限界を、逃げつつ待つ。
ただ、未練もあった。
後少しだったのに、と。
とりあえず白いキャノンを撃とうとして、やめて翔太はいくつもの民家を貫いて空いた横穴から脱出する。
外では、翔太を心待ちにしていたレイ達が、翔太の姿を見て安心と喜びで迎えた。
「違う、アイツ……」
その時。
翔太の後ろで、民家が噴出した。
鉄砲水のように、バラバラの瓦礫になって、道へ。
「どうしたの!?」
「さっきの強い術、時間制限なくしたっぽい」
「嘘っ!?」
「そんなことが……」
可能なのか、と言う前に、リョネルが姿を現した。
そして翔太に槍を振るう。
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