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ギリギリでかわした翔太が転げるように逃げると、後方からいしつぶてが降り注ぐ。
槍が地面を砕いた破片だ。
「うわっ……と」
「翔太!」
レイは翔太のところへ駆け寄りたかったが、下手に動けば炎の尽きかけた自分は足手まといにしかならない。
ぐっとこらえて見守ると、翔太の様子がおかしい。
危機はすぐそこまで迫っているのに、炎を使おうとしない。
インクリースですら、だ。
「まさか……」
「うん、炎切れた」
翔太初めての炎切れである。
炎が発現したその最初から、龍一やレイを驚かせるほどだった炎が尽きた。
それだけ長く、豪快に炎を使い続けてきたということ。
「なんだ……せっかく解放したのに、つまらないな……ふふ」
槍を肩に担いだリョネルは、しっかりと目を開けていた。
口元は笑っているのに、その目は全く笑っていない。
「じゃあ、なっ!」
「させねえよ」
消えるように高速で動き出したリョネルを、小さな影が止めた。
再びダークボディを発動した龍一だ。
「俺に任せて引け」
龍一に促されて、翔太は華那達の方へ走る。
いつもならいざ知らず、今の翔太はただの守るべき重荷だ。
分かっているから、引く。
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