Prolog

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生温い風が吹く。 夜でも明るい歓楽街、その街角にある酒場の野外席に、男が1人座っていた。漆黒の短髪に眠たげな同色の瞳、片手には空になったグラスを持っている。20代後半と言った所だろうか。 よく見ればその腰には4本の片刃刀を提がっていて、彼が武器を必要とする職業に就いている事を表していた。 「……ダリぃな。」 ぽつり、と彼の唇から低い声が漏れた。どうやら誰か待っているらしく、空のグラスを玩びながら野外席に面した通りの向こうを見詰めている。 「面倒臭くなってきたしなぁ…帰るかな。」 うんざりしたように洋卓に肘をついて彼が呟いたその時。 「サモン!」 青年の声が響いて、彼は振り向き、苦笑した。 「遅ェぞ、エルザ。」 エルザと呼ばれた声の主は鮮やかな金髪を閃かせ、空色の瞳で彼…サモンを睨んだ。 「仕方ないだろ、情報仕入れるのに手間取ったんだよ。」 「そりゃご苦労さん。」 「他人事かよ!」 「それで、情報は?俺の出番は何時になるんだよ?」 怒って声を荒げたエルザは無視して、サモンは人の悪そうな笑みを浮かべた。それを見たエルザは大きな溜め息を吐く。 「ほんっとにお前は…まぁいいや仕事の話な?情報屋に依れば今回の対象は後30分で予定の場所に来るってさ。」 「1人か?」 「1人だよ…その方が俺らもやり易いだろ?」 了解、と呟く様に応えて、サモンは立ち上がった。腰の刀が触れ合い、ガチャガチャと音を立てる。 「さぁて…行くか。」 「ん…作戦とかは…何時も通り?」 「あぁ、何時も通りだ。」 サモンに次いで立ち上がったエルザの問い掛けに応えて、サモンはにぃ、と笑った。 「…何時も通り、"人斬りサモン"のお出ましだ。」 生温い風の中、2人の姿は暗い路地へと消えていった。
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