162人が本棚に入れています
本棚に追加
「木元。久し振り」
いわゆるお色直しの歓談中、トイレに立った私にそう話し掛けてきたのは、紛れもなくあの事件の張本人……西森司だった。
「あ、どうも」
軽く会釈をして通り過ぎようとする私の肩を西森が掴んだ。
私はスッと肩をすくめ、その手から逃れた。
「……なに?」
西森は相変わらず格好良かった。
中学の頃からそうだったが、間違いなく、素敵な大人の男に育っていた。
「ちょっと、いい?」
いいはずがなかった。
本当は嫌だったが仕方がない……でも、今更何を話すの?
話すことなど、昔も今も何もない。
最初のコメントを投稿しよう!