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鈍い音と共に、男の体が横に吹き飛ぶ。
遥と母さんの小さな悲鳴が聞こえても、俺の怒りはおさまってくれなかった。
殴った右手が痛い。
人を殴ったのは産まれて始めてだ。
こんなに心の底から誰かを殴りたいと思ったのも、憎んだのも。
希美には、俺と遥できちんと話すはずだった。
高校を卒業する頃に、真実を話そうと約束した。
なのに…この男のせいでっ…!
「なんなんだよ!今更現れて…お金なんかのために希美を傷つけて!!帰れ!帰れよ!!」
「で、でも俺は希美の本当の父親なんだから真実を明かす権利くらい…」
「希美の父親は俺だ!!希美を一番愛してるのも…大切に思ってるのも俺だ!希美を愛して大切に出来ない奴に父親だと名乗る資格なんかあるかよ!!」
一気に叫び、強く拳を握りしめた。
涙が頬を濡らし、視界は歪みきって前すら見えない。
「…帰れ。二度と俺達の前に現れるな。次にお前を見かけたら、……どうなるかは保証しない。」
尻餅をついたままの男を見下ろし、唸るように言い捨てた。
男は怯えた目をして立ち上がろうとする。
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