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一目散に走り去った男の背中を見て、更に悔し涙が込み上げてくる。
ぐっと歯を食い縛って立ち尽くしていたら、太ももに何かがぎゅっとしがみついてきた。
「…希美…」
俺の足に両腕を回し、希美の潤んだ瞳が真っ直ぐに見つめてくる。
本当の父親のあんな発言を聞かせてしまった。
また希美を傷つけてしまったかもしれない。
胸が不安に包まれていく。
しかし、希美はそのままニコッと笑った。
「パパ、かっこ良かったよ!」
「え…?」
「…ありがとうパパ。私のパパは、パパだけだよ。もうパパから離れない。」
体が震える。
その言葉を聞いた途端、力いっぱい希美を抱きしめていた。
傷ついたはずなのに。
俺に嘘をつかれていたと、悩んだはずなのに。
純粋な瞳が本当に俺を好きだと言っていた。
嬉しさと悔しさがぐちゃぐちゃと俺の中で混ざり合う。
遥も歩み寄って来て、俺と希美ごと抱きしめてくれた。
「…温かいね。」
遥が言いクスリと笑う。
二人の温もりに心底安心して、俺は更に涙が止まらなくなってしまったのだった。
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