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「あーあ……。負けちゃった……」
残念、と言ったようにミズキは落ち込むそぶりを見せる。
「ふぅ……。ちょっと休憩するか」
「うん」
ミズキはゆっくりした動きで落ちた木刀を拾うと俺の近くに座った。
少し悲しそうな表情。そうとう努力したのだろう。
「ミズキはよくやったよ。そんな顔すんな」
俺も腰を下ろし、ミズキの頭を撫でてやる。
こうすると決まってミズキは笑顔になる。ちょっと恥ずかしそうにするのが面白くて俺の小さな楽しみでもある。
「どのくらい一人で練習した?」
「ん……、わかんないくらい」
ミズキの分からないくらいは相当な時間だろう。
「そっか。頑張ったな」
ミズキは何も言わずに下を向 く。きっと顔を赤くしてんだろうな。
そっと手を離してみる。
「あっ……」
ミズキは紅潮させた顔のまま、俺を見上げた。
「どうした?」
もじもじとミズキは指をツンツンさせる。
「もう少し、……撫でて欲しいな。なんて……」
驚いた。ミズキがそんなセリフを吐くなんて珍しい。
俺は、しょうがねぇな、ともう一度ミズキの頭へと手を動かした。
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