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木々に囲まれた空間に木刀が交わる乾いた音が鳴り響く。
「ほらっ! もっと素早く!」
「んっ、くっ!」
ミズキは少しずつ後ろに後退していく。
力の差もあるだろうが、獲物をうまく操れていない。
「俺はっ、手加減しないからな!」
そう、俺は絶対に手加減はしない事にしている。
女だから、力が弱いからと手加減するのは〝差別〟と同じだ、と俺は思っている。
「誰もそんなことっ! 頼んでない!」
手加減しない理由にはミズキの性格の為でもある。
ミズキは見た目的には弱いイメージが付きそうだが、実際はそうでもない。
負けん気は強いし、努力だって人一倍する。
だからな、油断は出来ないんだ。
「っと! 今のは結構よかったぞミズキ」
「当たり前! まだまだ行くよ!」
おそらく、俺の知らない所で練習を積んでいるのだろう。
最近になってミズキはかなり上達してきている。
ミズキは一旦距離をとり、瞬発力を生かして一気に詰めてきた。
「悪くない、けど――」
――カンッ
「まだまだ甘いな」
カランカランとミズキの手から離れた木刀が近くに落ちる。
ミズキは驚き、悔しそうな顔を一瞬だけ見せた。
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