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黒く光る皮ジャン。
それを何度か捉えるが、あとわずか。
必ず直撃する瞬間後ろに逃げられ、相手の芯に衝撃を伝えられないでいる。
「ち、しぶてぇ!」
「ぐっ…!」
黄色と黒の虎柄のさらしが、何度も黒服を左右に揺らす。
それでもなお倒れない。
この男、攻撃は下手だが逃げるのだけは一級だ。
「うそだろ?先輩ライセンス持ってんだぜ…?」
「は、そうかい。解けたぜ西のユージの謎がな」
「はっ、俺なの?」
「ようは、てめえらは女とヤルことだけ考えたエロ猿どもの集まりなわけだ。そこでテメェの顔を使って女を騙す。騙したら逃げないように黒服の一味が動き出す」
「なに?そんなの分かってどうすんの?」
「つまりだ、喧嘩が強いって聞かねぇのはそういう話だ。結局テメェはこの黒服をボディーガードさせてるチャラい奴だって話、だ!」
やっと動きが鈍くなってきて、右の拳が黒服の横腹を叩く。
「なんだよ、虎の龍神だってかなりの女とヤってるって聞いてんだけど。俺らとやってんの同じじゃん!?」
ガンッ!!
倉庫の壁を強く殴りつける。
あえて黒服の顔の横を通し、直撃させなかった。
さっきの一撃が聞いていたのか、黒服は壁を滑るように倒れていく。
「俺と、同じだと?」
「な、なんだよ…」
「誰かに守ってもらわなきゃ自分がだせない奴が、たった一人でこんだけの人数を相手に喧嘩売る俺と同じだっていうのかよ?」
「だってそうじゃん!?噂で何人もヤってるって聞いたんだから!」
「ざけんなぁ!!」
突然の怒号に、ユージが腰をぬかす。
周りの仲間もすでに逃げており、二人しかいないような状況で口を開く。
「確かに昔の俺は、俺の意思で女を抱いてた。だがな、今は俺から声はかけねぇし、ただ声をかけてくる女にも用はねぇ」
「だ、だったらなんで…」
「覚えときな、誰かのために自分を差し出すヤツしか俺は抱かねぇ。自分が受けなきゃならない罰を違う誰かが受けてるとき、自己犠牲をすることにより、それを助けてくれるのが…虎の龍神だ」
「な、なんだよそれ…」
「わからねぇか、罪の精算をした女を助けるのが俺のやり方だ。確かに抱いた女は数知れねぇが、二度も罪の精算をさせることはないんだよ!」
そして右拳を振りぬいた。
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