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「私、そんな大役を努める自信ないんだけど………」
今まで平和な世界で生きてきた柚月にとって、謂わば救世主になれ、という話は重過ぎる荷である。
当然断ろうと思った。力にはなりたいけど。
「ぁ、な、何もお一人でっ、と、いう、わけでは………」
「ぇ、そうなの?」
戸惑った様子で神無が口を挿むと柚月も驚いた表情ですぐさま返した。
「ひ、妃神子様、こ、これをっ」
神無が差し出したのは土で出来ている鈴が2つ紐に括られているものだ。
その土鈴は全体が象牙色で、薄紅梅色で花のような模様が1つずつ描かれている。
「わっ可愛い!これもらっていいの?」
柚月が手の平を出すと神無はそっとその上に土鈴を置いた。
そして、ふと違和感に気付く。
「ん?この土鈴、鳴らないの?」
「は、はい。こ、この土鈴は、大変特別なもの、でして………」
そう、その土鈴は振っても音が鳴らなかった。中身は空っぽのようだ。
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