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「お母さんのバカっ!!!」
夕方、家に帰って早々母と喧嘩した。
原因は大事にしていた硝子のクマの置物を母が壊したから。
あれは遠くに行ってしまった幼なじみが唯一くれたもので
本当に、大事にしていたもの。
部屋に籠もって気持ちをぶつけるように泣いた。
外が真っ暗になるまで泣いて、ようやく少しだけ落ち着いた。
ぐぅー……
「泣いたらお腹空いた…かも。」
立ち上がって部屋を出ようとすると、カタッと音がした。振り向いて確認すると部屋の隅にある姿見の鏡がさっきまでと違う方を向いていた。
ホラー?とも思いつつ近づいた。
すると、
「な、なに?!」
鏡なのに、自分の姿が映らなかった。鏡は水面のように波紋を描きながら揺れている。
何がどうなっているのかわからなかったが、何故か冷静な自分がいた。
───きっと異世界への扉なんだ。本で読んだことある。
鏡から白い手がにょろにょろと伸びてきた。まるで手探りで何かを探しているように。
その手は柚月の腕を掴むと、ぐいっと引っ張った。
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