第十章

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その人は、顔を上げると、私に気がついた。 優人君だ。 すると、彼は私の顔を見るなり、本を片付けている。 そして、反対方向の階段に向かって、足早に去って行った。 追いかけようと思ったけど、足が動かない。 彼が消えたのを確認すると、また一つ、大きなため息をついて、本棚へと向かった。 これは今回に限ったことではない。 最近、いつもだ。 なぜなんだろう。 理由は全くわからない。 彼は私を見るたびに、こうやっていつも避けようとする。
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