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「あ゛ー…
落ち込むなぁ、コレ」
春の陽射しも飲み込まれそうな苦い溜息が零れた。
「どーしたよ?」
ひょいっと覗きこんできた顔だけ爽やかオトコ、雨宮。
柔らかな茶髪の前髪に映える、銀のフレームでできた眼鏡が知的な雰囲気を醸し出している。
容姿はいいけれど、ヒトが落ち込んでる時ばっか現れんの。
人の不幸は蜜の味、ってホントなのね、きっと。
その密に寄ってくるコイツは……
「おーい!
俺の話、聞いてる?東堂」
「聞いてるわよっ!
どーしてアンタはいつもあたしが落ち込んでる時ばっか来るのよっ!」
「さぁね?
で、どーしたよ?」
答えを促されて、単語を口にした。
「ケータイ小説」
「ケータイ小説?」
「そ」
話はそれで終わりと言わんばかりに背中を向けたのに、まだ絡んでくる。
「こないだ言ってたやつ?
友達からホラー小説読みたいとか言われて仕方なく書いてるって」
あー…
そー言えばその時も雨宮は居たわね。
「そーなのよ。
頼まれて、なんとなく書いてみてさ。
そしたらレビューでつまんなくて時間の無駄だの、人間やり直せだの書かれてさ、だったら読むな!って話」
「なるほど」
「ネットは匿名だからって、何書いても許されると思ってんのかしら?」
「書かれた相手がどんな風に感じるか考えてないわけだ」
「そーよ!そーよっ!
私だって素人なりに頑張ってんのよっ!」
「そして批判、中傷に地味に傷ついてるわけだ」
横目で雨宮を見れば、楽しそうに微笑んでる。
コイツ!
絶対、腹黒っ!!!
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