物語の始まり

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  とある家の仏壇の前。 そこで一人の少女が手を合わせていた。 少女は、青みがかった黒髪を肩より上で切っている。 中性的な顔立ちで、男だと見間違えられてもおかしくない。 この少女こそが、新だ。 「…よし」 家にある仏壇の前で手を合わせる。それが新の日課だった。 「いってきます」 近くに置いてあった鞄を手に取り、仏壇にむけて声をかける。 いつもそうして学校へ向かう。 新に両親はいない。新が中学一年のときに亡くなった。 兄弟は兄がいたが、数年前から行方不明だ。新の心情としては、 「簡単に死ぬ人じゃないし、生きてるだろう。見つけたらぶん殴ってやる!!」 ぐらいにしか考えていない。 何はともあれ、新は生きている訳で、普通に学校に通って、普通に一日を過ごしている。 いつもの様に学校への道のりを歩いていると、桜の花びらが舞ってきた。 「あれ?ここらに桜は咲いてないはずだけど…」 花びらの舞ってきた方を見ると、それはそれは大きな桜が目の前にあった。 …道のど真ん中に。 「な…なに、これ?」 こんな所に桜、しかも大樹と呼んでもおかしくない大きさのものが咲いているはずはない。 ―…夢でも見てるのか? そう考えた新は自分の頬を抓ってみた。 「~っ!!いったぁ!!!」 思い切り抓りすぎたらしく、涙目になり、抓った所をさすっている。 「夢じゃ……ない?」 ―じゃあ、この桜は? 考えた瞬間にもの凄い突風が吹く。 それと同時に、桜の花びらが新を包んでいく。 「っ!!!!」 新は耐えられず意識を手放した。
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