癒えない傷、癒さないといけない傷

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「ここは……」 「おぉ、やっと目を覚ましたか、心配させおって」 「じいちゃん……」 雨雲を遮るように、じいちゃんが、目の前に現れる。 「俺……何でこんな所で寝てるんだ……」 「記憶が混乱しとるようじゃな……」 「混乱……」 じいちゃんが言ってる事が理解できない俺。 体を起こそうとするが、激痛が全身に走り、身動きが取れない。 「無理はするな、今、運んでやるから、もうしばらく眠るといい」 頭を撫でられ、再び静かに眠る俺。 何かとても大切な事を忘れている気がするけど、俺はそのまま意識を失った。 また、真っ暗な世界だ。 でもさっきとは違う。 俺から数メートル離れた所に誰かいる。 背中を向けて俯き、全く動く気配を見せずに座っている。 俺はそれが誰か知っている。 「おい、ヘタレ」 「……誰がヘタレだ」 力なく応える、もう一人の俺。 「何、しょぼくれてるんだよ」 「うっせぇ……俺の事なんか、放っておけ」 憎まれ口を叩くが、やはり力がない声。
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