悪夢

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 それでもどうにか一通り治療を終え患者が帰るとスタッフ全員が集められ、帰宅できる者は直ちに家に向かうように命じられた。しかし、テレビから聞こえる情報が確かならば、電車の運転再開の目処は立っていない。  その為自転車で通勤している私が一番最初に職場を後にすることになり、猛スピードで家路を急ぐ。正直、この時の記憶は曖昧だ。  十階に位置する家まで階段を駆け昇り、緊張と疲労で心臓は激しく脈打ち、吐き気が襲い来る。 「早く! 早く着いて!」  心の中で叫びながらやっとたどり着いた部屋に飛び込むと、そこは私の住み慣れた家とは駆け離れた、悲惨な状態だった……。
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