悪夢

9/11
前へ
/21ページ
次へ
「大津波警報が発令されています! 海岸付近から避難してください! 繰り返します!」  テレビではアナウンサーの叫び声が、緊迫感を引き立てている。チャンネルを変えるとそこに映し出された青い海が、今まで見たこともない渦を巻いていた。 「これ、危険だよね……?」  独り言を呟き、手が動きを止めた。視線が釘付けになる。  この津波こそが最も尊い命を数多く奪い去ることになるのだが、それを目の当たりにするのはもう少し先のことだった……。  テレビでは同じ情報が繰り返され、帰宅難民が至るところに溢れている。何人もの会社員や学生が、徒歩で家に向かっていたのだ。  “最悪な一日”正にその言葉が相応しい日になってしまった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加