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「ごちそうさま。美鈴、片付け頼めるか? もう出掛ける時間なんだ」
椿は二人より少し早めに食事を済ませ時計に目を向けると、時間がないことに気付き、慌てて席を立った。
「はい、後片付けは私達がやりますよ」
「悪いな。じゃあ、行ってくるよ」
「お兄ちゃん!」
背を向けようとする椿にアリスが勢いよく抱きついてくる。
「早く帰ってきてね」
上目使いで言い寄るアリスの目を見てみると、少し涙ぐんでいる様だ。
「はいはい、分かってるよ」
椿は優しくアリスの頭を撫でた。
(こうして見てるとまだまだ子どもだなアリスは……)
「いってらっしゃいマスター。車には気をつけて下さいね」
「あぁ。ほら、離れろアリス」
「むー」
「行ってきます!」
アリスが渋々離れると、椿は慌てた様子で家を出ていった。
「行っちゃった……」
「すぐに帰って来ますよ。さあアリス、テーブルの上を片付けましょう?」
「はーい」
泣きそうな顔になっているアリスの頭を美鈴が撫でると、すぐさま笑顔になり、美鈴と一緒に朝食の後片付けを始めた。
「アリスは撫でられるのが好きなんですね、クスッ」
「ち、違うもん!」
手際の良い美鈴の甲斐あってか、後片付けはスムーズに進んだ。
「お姉ちゃーん、終わった?」
台所で洗い物をする美鈴にソファーに座って休んでいたアリスが聞く。
「はい。今食器を洗い終えたところですよ」
「お散歩行こーよ!」
「そうですね。お天気も良いですし、行きましょうか」
「わーい!」
散歩が大好きなアリスは飛び跳ねて喜んだ。
「準備出来ました?」
「うん!おっけー」
「では出掛けましょう!」
二人はいつも散歩で通る道をお喋りを楽しみながら歩き、ゲームセンターでぬいぐるみを取ったり、ファミレスでパフェを食べたり、ショッピングモールでお買い物をしたりして充実した一日を過ごした。
「色々と歩き回っていたら結構時間が経ってしまいましたね……」
日が落ち始めた夕方、二人は人気のない路地を歩いていた。
「でも楽しかったね!」
「ええ。今度はマスターと一緒にお出掛けしたいです」
すると、満面の笑みを浮かべて歩く二人の前方から、一人の女の子がゆっくり歩いて来た。
「マイロイドでしょうか?」
「こんにちは!」
「コンニチハ。アナタ達モマイロイドデスカ?」
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