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奥州、米沢城。
太陽が登り、小鳥が囀ずる中、
薄暗い部屋に閉じ籠る一人の少年がいた。
「梵天丸様。
朝餉を持って参りました。」
従者である青年ー片倉小十郎が戸を開け、少年ー梵天丸の前に握り飯と味噌汁を置く。
しかし、それらが梵天丸の口に入ることはなく、
「いらないっ!」
お盆をひっくり返し、朝餉がめちゃくちゃになってしまった。
「梵天丸様…」
「うるさいっ!早く出ていけ!!」
荒んだ瞳で小十郎を見る梵天丸。
ー昔は、こんな子ではなかったのに…。
「どうせお前も他のやつらと同じだ。
俺が死ねばいいと思ってるんだろう?」
「そんなことは「“そんなことはない”ってか?…嘘つくな!」
昔は、明るく元気な普通の子であった梵天丸。
しかし、
彼を襲った天然痘(病気)が、
母親の視線が、
周りの環境が、
彼を変えてしまった。
「出ていけって言ってるだろう!」
「…失礼します。」
小十郎はこのまま自分が居ても梵天丸の心が落ち着かない事を考え、
部屋を後にした。
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