1章・第一話

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「…っ、ひっく…。」 梵天丸は、一人部屋の隅で泣いていた。 声を殺して、ずっと…。 こうなりたくてなったわけではないのに、 周りの人間が梵天丸の存在を否定する。 苦しくて堪らない。 《バケモノ!》 耳を押さえても、母である義姫のあの時の声が聞こえてくる。 怖い。 いっその事、 いなくなってしまえば…。 その気持ちが、心の闇を拡げていってしまった。 ■□■□■□■□■□■ 「梵天丸様…。」 その頃、小十郎は一人空を見上げていた。 主である梵天丸の事を思いながら…。 昔は、笑顔の絶えない普通の子だったのに、 天然痘に掛かって、右目が見えなくなってから、 義姫と周りの反応で、 梵天丸の笑顔は失われてしまった。 分かってあげられれば、 自分が梵天丸の代わりに病気に掛かれば、 どれだけ救われるだろう。 そうできない未熟な自分自身が情けなく、 悲しかった。 「もう一度、行ってみるか。」 小十郎は、水を一回頭にかけ、冷やした後、 梵天丸のいる部屋へと入った。 しかし、梵天丸の姿がない。 「梵天丸様!?」 部屋中探したが、どこにも見当たらない。 周りの者に聞いても、 「あの子(あんなの)がいたらすぐにわかるだろう?」 「嫌になって逃げたんじゃないのか?」 ケラケラと笑いながら答えが返ってくる。 今は、唯一頼りである輝宗様がいない。 小十郎は走って城の近くの森の中へと入っていった。 「梵天丸様っ!!」 .
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