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風呂はとても広く、一人で入るのはもったいない気がした。
「ふぅ・・・麗香、か・・・可愛い子だったなぁ・・・」
オレの頭に麗香の顔が浮かぶ。
「せめてメアドくらい貰っておけばよかったなぁ・・・」
なんにせよ、時間は沢山あるのだ。
湯船に浸かりながらオレは考えた。
「オレは・・・高校に入ったら青春できるかな・・・」
中学時代は部活だけじゃなく、仲の良い女の子は何人かいたものの、オレも友達だという意識が強い←(ここ重要)等の理由により彼女はいなかった。
その分、男子や部活仲間とはかけがえのない友情を手にいれたが。
決して、オレが、モテないわけじゃないんだ・・・っ・・!
「とにかく!」
全裸もいとわず、ザバっと湯船から出る。
拳を掲げ、
「オレは高校で彼女を作る!そして勉強して、部活もやって、思うまま青春を謳歌してやる!!」
と叫んだ。何か上の階からバキッという音が聞こえた気がしたが関係ない。
そのまま体をふき服を着て風呂場を出る。
体に決意と力がみなぎっていた。
「待ってろよ・・・オレの春!!」
と自分を鼓舞していると、
『ピンポーン』
とチャイムが鳴った。
まさか・・・麗香か!?
期待に胸を・・・いや、夢を膨らませ、玄関のドアを開けた。
するとそこには、髪を紫に染めた、いかにも大阪風のオバハン(失礼!)が怒り心頭で立っていた。
「あんたねぇ!!新しい人でしょ!?」
「は、はぁ・・・」
期待を打ち砕かれたのと、勢いに押されてしょんぼりと返事をする。
「さっきからうるさいの!あたしゃ上の階なんだけどね、叫ばないで!」
と言ったかと思うとバタンとドアを閉められた。
・・・オレの家なのに・・・
ちなみに、このマンションは高級な上、一部屋が広いため一階ごとに一家族という贅沢な造りをしている。
夢を打ち砕かれたオレは、その場にがっくりと膝をついた。
「母さん・・・オレ・・・生きていけるかな・・・」
オレにとっての春は、まだまだ遠かった。
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