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集積所の近くの川辺にある、大きな木。
青々と葉を茂らせた枝が、突然揺れ始めた。
「誰か・・・いるのか・・・?」
バサッと木の葉を散らしながら何者かが飛び降りた。
ずっと隠れていたらしい。
軽快に地面に降り立ち、じっとオレを見つめ返すのは、一人の少女・・・
「あーあ、見せつけてくれるわねぇ。学校でいったい何やってんだか」
朝からオレや麗香を見ようともしないクラスメイト、神楽葵だった。
「い、いえ、なんでもないです!これはその、拓海さんの髪のホコリを・・・」
しかし葵は冷ややかな視線を向ける。
気まずい空気の中、両者が硬直した時・・・
「麗香さん~?」
と、遠くから麗香を呼ぶ女子生徒の声が聞こえた。
振り返ると裏庭に入ってすぐの所に、二人の女の子が立っていて、麗香に向けて手を振っている。
「クラス委員会、もう始まるわよ。早く早く!」
「あ、生徒会長と副会長・・・ごめんなさい匠海さん。私、もう行かないと・・・」
「クラス委員の仕事があるんだったね。悪い、引き止めちゃって」
麗香は不安そうにオレと葵の顔をみた。
「オレは大丈夫だよ。気にしないで行ってきな」
空き缶を律儀に集積所に捨てると、麗香は名残惜しそうな顔で生徒会長達の方へ駆けていく。
麗香達が去った後、突然葵の声がした。
「―――――ねぇ、匠海」
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