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いきなり名前を呼び捨てにされて、オレはドキッとして振り返る。
葵が目の前に歩いてくる。ちょっと目つきがキツイ。
「何ビックリしてんのよ。名前で呼んで欲しいんでしょ?」
あれ?聞いてくれてないと思った自己紹介、聞いててくれたんだ。
「自己紹介、聞いててくれたんだ」
「違うわよ。寝ようとしてウトウトしてたら、勝手に聞こえて来たの。入学早々に女をひっかけるなんて、匠海ってもしかして女たらし?」
「ひ、ひっかけてなんかないよ。佐久間さんとゴミを捨てに来てただけだよ」
慌てて言い訳する。
ヘンな誤解されたら、麗香にまで迷惑をかけてしまう。
「ふーん。名前で呼び合って、押し倒してキスしようとするのがゴミを捨てに来てただけ、ねぇ」
作戦失敗!
そりゃ、ゴミ捨てって言うには無理ある状況だったけど。
「あれは麗香に・・・いや、佐久間さんに間違えてぶつかっちゃったんだよ、ちょっと考え事しててさ。」
・・・しばし沈黙。
すると葵はニコッと笑顔になった。
「なーんだ、そうだったんだ」
無邪気に笑うと、神楽さんって・・・結構、いや、かなり可愛いよな。
「じゃ、佐久間さんとは単なるクラスメイトなんだね」
「もちろん。あー、でもよかった。神楽さんと話せて。今日、ずっと目も合わせてくれなかったから、嫌われてるんじゃないかって、不安だったんだ。・・・でもなんでそこの木の上に?」
「あそこはあたしの昼寝スポットなの。それと、葵」
「ふぇ?」
「佐久間さんの事、名前で呼んでたでしょ。単なるクラスメイトなのに。だったらあたしだってクラスメイトなんだから、名前で呼ばなきゃ変じゃない?」
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