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この方が親しみをもてるが。
「ごめん。引き留めちゃったね」
「いえいえ。私がぶつかったのが悪いんですから。それと・・・匠海さんは何階ですか?」
オレは瀬戸内さんから送られていたカードキーを見る。
「えーっと、15階だね」
「それでは、私が毎朝迎えに参りますね」
なんと!
この見目麗しきお嬢様が朝から迎えに来てくれるとは!
もうルート確定か!?開始8ページでエンディングが!?
「わ、わかったよ。朝は待ってる。じゃあ、部屋に行くね。ありがとう、佐久間さん」
「麗香、って・・・」
「え?」
「麗香って、呼んで下さい。私だけ匠海さんを名前で呼ぶなんて不公平です」
「でも、佐久間さんは別に名前で呼ぶ理由なんて・・・」
「私だって、匠海さんって名前で呼ぶの恥ずかしいんですよ。それに『佐久間』だと真っ先に会社が出てきてしまって新しい友達がつくれないかも・・・」
なるほど。
この悩み方じゃ中学の頃は中々友達が出来なかったに違いない。
だから最初に同じ高校だと分かって嬉しそうだったのか。
話せる友達ができた。と。
「言われてみれば・・・そ、それなら、麗香さん・・・」
「『さん』はいりません。『麗香』だけでいいです・・・」
女の子を名前で、それも呼び捨てにするなんて・・・
でもなんだか、声に出したら凄く甘くて美しい響きになる気がした。
「れ、麗香・・・」
「ふふっ。声が震えてますよ。あんまり女の子に慣れてないんですね」
うっ・・・
た、確かに、今まで名前で呼び合う仲の女の子はいなかった。
彼女はおろか、告白もされたことも無ければしたことも無い。・・・いや嘘。
されたことなら幾度かあった。
悪いがお断りさせてもらったが。
中学時代はバレーボールをやっていて忙しかったのだ。
全国三位になったりするほどで、正直彼女なんて余裕は無かったからな。
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