屋上

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 少し不安になることがある。  揺らめくような、揺れ動くような、何かに背中を押されるような、ひどく懐かしくて不安な気持ち。  そう感じるようになったのは、一ヶ月ほど前からだ。  学校一どんくさい女の子と呼ばれていた私は、少し滅入った気持ちを晴らすために、学校の屋上へとやってきていた。  屋上は閑散としていて、本当にただあるだけのような場所だった。当然ベンチなんか置いてないし、植物の植え込みなんかもない。周囲を囲っている柵も低くて、人が立ち入ることを前提としていない造りになっている。  私は剥き出しのコンクリートの上に寝転がる。  掃除なんかはされてないし、雨ざらしのこのコンクリートははっきり言って汚い。苔だって生えてるし、鳥の糞も落ちている。私はその中でいつも決まった場所に寝転ぶのだ。そこは柵の傍。頭を動かせば、屋上、空、グラウンドと見渡せる場所だ。何があってもすぐに気付けそうな場所。  と言っても、空から人が降ってくるわけでもないし、寝転んでいるからグラウンドからもほとんど見えない位置。それに屋上は立ち入り禁止で、ここに出られる唯一の扉にも鍵も掛かってるから誰かが来るわけでもない。私はちょっとした裏技を知ってるから入れるんだけど。
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