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「裕美子、本当に花火好きよね」
「うん。だってあんなに大きな花が夜空に打ち上げられるんだよ。そしてそれを何千人もの人が見つめて、綺麗とか素敵とか言い合ってるんだよ。それって本当に素敵じゃない」
三島裕美子は、高校三年の時の地元の花火大会を思い出していた。
「今度は青ね。おっきい」
隣に座っていたのは柳美里である。
「ねえ、みーちゃん、花火の色で何が一番好き?」
みーちゃん、とは柳美里のニックネームである。
彼女は出会った人々ほぼ全てにこのニックネームで呼ばれている。
「んーやっぱり情熱の赤かなあ」
「何、情熱って。みーちゃんらしくないよ」
三島裕美子は真面目な顔で、情熱、なんて言った柳美里が面白かった。
「だってさ、花火ってむさ苦しいオジサン達が汗水流して働いて作るんだよ。それはそれは大層な情熱が込められてるわけじゃん。だから、赤こそが職人さん達が見せたい本当の色なんじゃないかなって」
「むさ苦しいオジサンは失礼だよ」
三島裕美子が笑う。
「でも確かにそうかもね。赤色、なんか輝いてる。他のも素敵だけどね。でもあたしは白いシュワシュワしたやつ、好きだよ」
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