序章

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ベッドの上の時計を見る。 6時30分。 「早く起きすぎたか…」 休日にかぎって、と早起きしてしまった事を無念に思いつつも、布団を持ち上げ起き上がる。 彼は二度寝という技術を生憎持ち合わせていない。 二度寝をしようと、ベッドの上で、うなされるかのように何度も寝返りをうつも、結局寝れない。 そのうちに一度起きたらすぐに起き上がることを習慣としたのである。 カーテンを開け、階段を降りる。 昨日の残りのカレーがまだ鍋にあったが、気分ではないので棚の上に散乱したインスタント食品に目をやる。 「朝から俺を食うのか。あんた死にたいのか」などという声が聞こえてきそうだが構わず手にとる。インスタント食品が抵抗などするはずもなく、呆気なくラップを剥がされ蓋が剥がされる。 「たまには歯向かってもいいんじゃないか」 どこかで聞いた覚えのある言葉を思わず口にする。 誰が言ってた台詞かを思い出す前に、中の調味料を取り出し、やかんに水を入れ、IHをONにする。 その間にカーテンを開け、テレビを点ける。 表情の無いキャスターが全国で指名手配されている連続殺人犯の情報収集を呼びかけている。
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