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「はぁーあ。本当に嫌になる」
溜め息を漏らしたのは三島裕美子である。
「なに、あんたなんかもうすぐじゃん。あたしなんてあと20ページよ、20ページ」
「20ページも10ページも五十歩百歩よ…早く終わらせて寝たい」
「家に彼氏の一人や二人待ってたらすぐ終わらせられるのに」
不満を漏らすのは草野詩織である。
「馬鹿言ってないでさっさと終わらせて帰るよ」
二人は、彼女らが通う大学の近くの図書館で、教授から渡された驚愕すべき量のレポートを終わらせようと、必死にペン先を動かしていた。
「よし、終わった」
先に安堵の息を漏らしたのは、やはり三島裕美子であった。
「よし、終わった」
「え?嘘」
「嘘じゃないですよー。ほらなんなら全部見てみる?」
草野詩織は50枚のレポート用紙をパラパラめくってみせる。
「なんか、負けた気分」
「ま、ドローってとこかなあ」
「でもあたしが勝ったことには変わりはない」
「わかったわかった。おごるって、焼肉」
「来週の月曜日が楽しみですねー」
二人は図書館を出た。
図書館の辺りには木々が生い茂り、隣接した国道の街灯のみが明るく光っていた。
空には満天の星空が広がる。
東にはオリオンが圧倒的存在感を誇っていた。
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