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「じゃああたしはお母さん待ってるから帰るね」
「うんわかった。来週必ずおごってね」
「しつこいなぁ全く。わかったって。じゃあばいばい」
「うん、ばいばい」
草野詩織は、母の車であるという、黒のレガシーに乗り、図書館を後にした。
「寒いなぁ…」
三島裕美子はベージュの手編みのマフラーを首に巻いた。
彼女がバス停に向かう途中、2台のパトカーが路肩に寄って停車していた。
「事故?」
スリップ事故だろうか、と思った矢先、1台の救急車、更にもう1台のパトカーもやってきた。
辺りに立入禁止のテープが貼られる。
「え…うそ…殺人事件とか…?」
好奇心につられるままに、現場に近付く。
ブルーシートが覆うものは、恐らく誰もが遺体であると、予測できた。
彼女もその一人である。
画面越しでよく見る光景が、今目の前に存在している。
恐怖よりも困惑が先に彼女を襲った。
「こんなところで殺人事件なんて…早く帰らないと…」
次々と騒ぎを聞いた人々が集まってくる。
「またあの殺人鬼らしいわ」「亡くなったのはまた大学生?」等という声が聞こえてきた。
やっぱりか。やっぱりまたあいつがやったのか。
困惑の次に彼女を飲み込んだのは、怒りであった。
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