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布団から立ち上がり、乱れた着物の襟元を直す。
そのまま部屋から出ようとすると、後ろから名前を呼ばれた。
「郁人、何処行くの?」
彩夏だ。彩夏が起きたからには、もう部屋から出られない。
俺は名前を呼ばれて強張っていた肩を落とすと、ゆっくり息を吐き出した。
「何処にも行かないよ。朝だから障子を開けようと思っただけ」
少々嘘をついた。
「障子を開けるって……まだ起きるまで二時間もあるよ?」
俺は部屋から出ることも、障子を開けることも諦め、布団の上に腰をおろした。
「でも、もう日は出てるしさ。……嫌っていうなら別にいいけど」
そんなことを言っているうちに、彩夏はまた俺に抱きついてきた。
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