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「深い意味、ですか……」
「うむ。今は解らないかもしれないが、きっといつか解る時が来る筈だ」
理事長代理の言葉に、今は理解を深めるしかなかった。
「解りました……じゃ、今度こそ!行ってきます!」
「行ってらっしゃ~い!」
「いい?先ずは一番近い、ファーラストに向かうのよ?森を左に……」
「わ~かりましたって!その説明、今日で37回目っスよ?」
ひらひらと手を遊ばせながらユーゴが遮る。それを聞いたフィルも笑う。
こうして、それぞれの言葉を胸に刻み、3人はアカデミーを後にした。
「……しっかし、平和だなおい」
目的地に向けて歩き出したのもつかの間、何もハプニングのような事が起こらない事にユーゴは退屈していた。
「天気は良好、風は心地いいレベルのそよ風……周りに困ってる人もナシ、あるのは草むら、と……はぁ」
「何言ってるの……平和なのはいい事じゃない」
「や、そうなんだけどさ……なんかこう、冒険らしくばばーっとハプ……」
そんな他愛ない話に花を咲かせていると、近くに生い茂った草むらから何かがばばっと飛び出て来た。
咄嗟に、向き直って距離を取る2人と、驚いてびくつきながらその陰に隠れるリム。
「うわっ!な、なんだ!?」
「あれ?ハプニングだよ、ユー君お待ちかねの」
「びっくりするハプニングはいらねぇよ!って……ハウンドじゃねぇか」
以前のハウンドと同類か否かは判別できないものの、それなりの図体をしたそれは、明らかに3人を狙っていた。
驚きを落ち着かせたユーゴはふと思い付き、ニヤリと口角を上げる。
「なぁフィル、ちょーっと協力してくんねぇか」
「え?何?」
「いや、難しい事じゃねぇよ。ちょっとだけさ、足止めして欲しいんだよ」
不可解な提案に、首を傾げるフィル。
「足止めって……そんな事しなくてもぉ、あれくらい倒せるでしょ?」
「いや、そうなんだけどな。試したい事があって……」
「何を?」
「……や、ちょっと全力で撃ってみたいなー、なんて……」
「な 何言ってんの!魔力は温存しないと、って先生も言ってたでしょ!?」
恐る恐る提案するユーゴを必死で止める。それもそのはず、まだアカデミーを出てすぐなのだ。目的地まで何があるか判らない状況での魔力の無駄遣いは避けた方がいいのは定石である。
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