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「いや、それは解ってんだけど!特訓の最後の方ってさ、なんか魔力を落ち着かせるとか言って全く使ってなかっただろ?」
必死に説得する。どうしてもやりたいようだ。
「だからさ、一回だけ!今回だけ全力で撃たせてくれって!それにほら、全力が解ってれば調整もし易くなるだろ?」
「それはそうだけど……いくらなんでもいきなり……」
「きた……」
そうこう言い合っている内に、ハウンドが3人に向かって走り出した。
「よし!じゃあフィル、頼んだぞ!」
バックステップで距離をとり、詠唱準備に入るユーゴ。
「えっ うそでしょホントに……あわわわ か 『喚装』!」
お構い無しに襲い来るハウンドを対して、咄嗟に換装するフィル。図らずも、足止めする形になってしまった。
「う~、もぉっ!準備出来たら言ってよぉ!?」
「解ってるって!んじゃ、集中していくぜ……」
目を閉じて、魔力の流れに神経を尖らせるユーゴ。両手に魔力が収束していく。
「まだだ……もっと、いける……!」
更に魔力を込める。次第に、風が巻き起こり始める。
それが渦を描きはじめた時、ユーゴが詠唱に入る。
『地に沈みしは赤き力、猛き力!形成せ、姿現せ……!』
ユーゴの周りに炎が纏まる。限界まで魔力を込め続け、自身の臨界点を感じた瞬間に叫ぶ。
「……うし!フィル!!離れろッ!!」
「わかった!!ん、えぃっ!!!」
ハウンドの体制を崩させながら、横に距離を取る。そして振り返りながらその旨を知らせ、ユーゴもそれを合図に目を見開く。
「おっけぇ、いいよ……ぇえっ!?」
バレトブレイズ
『炎の弾丸!!』
直後に放たれたのは、優に50はあるであろう炎弾。目を丸くしたのはフィルに限らず、ユーゴ自身もまたであった。
「え は?マジでぇ……?」
何十発もの炎弾がハウンドを襲う。直前に体制を崩されたそれに避ける術は無く、見事に被弾する。
全ての炎弾が撃ち込まれた後には、焼け焦げた地面のみが広がっていた。
「は、はは……20発位かと思ったけど、まさかここまでとは……」
「わ 私もこれ位なのかなぁ……」
ぽけーっと見ていたリムはあまりの衝撃に硬直していた。
そんな彼女を現実に引き戻し、3人は一路、ファーラストの村に向けて再び歩き始めたのであった。
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