第1章「出会い」

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ホーネスは授業中に体調不良になったため早退していた。 …らしい 僕は早々に帰る用意を済ます。早々と言っても何も持ってきていないのだが。 「さて、そろそろ帰るか…」 するとアンルの席が目に入った。 アンルも帰る用意をしていた。 朝は緊張して泣きそうな表情だったが今は違い、緊張しているのではなく、何かを悲しんで泣きそうなっているように見えた。 そしてお昼同様 「一緒に帰る?」の一言はやはり出ない。 しかし、僕が話さずとも転機は訪れた。 「ねぇフェル君…一緒に帰ってくれない?」 「う、うん、別にいいよ」 「よかった… すぐ用意をするから下で待ってて」 アンルは手を急がせる。 が、それが災いしてか彼女が持つ教科書が、まるで朝の僕のように床に落ちる。 「アンルさん、別にゆっくり用意してくれて大丈夫だよ。 …早く帰りたいから手伝ってあげるね」 「ありがとう… あっ、今初めて名前呼んでくれたね」
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