六章

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「あっ、一さん!」 「!、平助か」 ぱたぱたと子犬のように平助がやってくる。 「ん?どうかした?」 赤くなっている(らしい)顔を手で覆い隠している彼を不思議に思いながら問いかけた。 「いや…それよりどうした?」 「あっと、雪どこいったんだ?」 「雪なら…」 その言葉と同時に扉が開いた。 「おにい…っわ、平助先生。どうしたんですか?」 「なんだ、もう着替えちったか」 「?、はい…先生、何を持ってるんですか?」 「これ?っじゃーん!」 待ってました!と言わんばかりに手に持っていたそれを広げる。 それは、 「女性ものの…きも、の?」 「綺麗だろ?八木さんから借りてきた!」 八木…この屯所の家主から借りてきたという、女物の着物。 椿の柄が美しい着物だった。
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