迷子の侍

6/10
前へ
/175ページ
次へ
  ―――― ―― 「なぁなぁ神崎は壬生狼なんだろ?」 高杉は興味津々に聞いてくる。 「そうだね。一応壬生浪士組だよ。」 理嵐は狛羅に揺られながら答える。 「・・・本当に捕まえなくていいのか?」 「うん。プライベートでは仕事忘れてたいし。」 「そうか・・・。そうだよな!!プライベートでは忘れたいよな!!」 高杉はどうやらプライベートの意味を理解しているらしい。 ―・・・確か高杉晋作は中華人民共和国・・・今の清に行った事があるんだっけ。 「高杉は清に行った事があるんだろ?」 「あぁ、あるぜ。 俺はな、イギリスにこてんぱんにやられる清を見て、この国を護らなきゃ、変えなきゃならねーと思ったんだ。」 そう語る高杉の目は真剣そのものだった。 「・・・目指す場所は同じでもやり方が違うのか。」 理嵐はポツリと呟く。 「ねぇ、それどういう事?」 今までだんまりだった吉田が会話に入ってきた。 「ん? イヤ、壬生浪士組も薩摩も長州もこの国を護りたいと思ってるのに、やり方がそれぞれ違う。 薩摩は今は大人しく徳川に着いているが、時がくるのを待っている。 武器が揃い、徳川に噛み付こうとしている獣の様に。 時が満ちるのを・・・。 壬生浪士組は、前までは“徳川の世を護る”と言っていたが、今は考えが変わった。 武力だけでなく学問で日本を護ろうとする考えに変えた。理由は簡単だ。刀が鉄砲や大砲に敵うはずがないのが分かったからだ。 学問・・・とくに、経済、医学が頂点に立てる程になれば自然と異国は易々と日本に手を出すことが出来ない。」 「へぇ、壬生狼も考えてるんだ。」 吉田は感心したように呟く。 「まぁ、正確には俺が無理矢理方針を変えさせた。」 『!!!』 「だってそうだろ? 鎖国をして、海外との交流を殆ど断ち切った日本が書物の世界の動きなんてたかが知れてる。 外国と付き合うのならば、先ずは己等を理解し、他国を知る事が大切だ。」 「おっ!!俺も同じ意見だ!! 先ずはこの国をまとめ・・・」 「今の不平等な条約を解除し・・・」 『海外の知識を得る!!』 高杉と理嵐の言葉は一言一句間違わずに同じだった。  
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1121人が本棚に入れています
本棚に追加