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すばるは元旅館というだけあって、中はとてもきれいだ。
玄関もけっこう広いので、どこに靴を脱げばいいのかと困るほどだ。
おれが周りを見ながらぼ~っとしていると、
先に入っていった彼女が声をかけてきた。
「どうしたの? 今日からここに住むから緊張でもしているの?」
彼女は笑いながらおれの顔を見ながらそう言ってきた。
「……いや、なんかやっぱりすごいなぁって思って。瑠璃垣さんは今までと違うところに住むっていうのは緊張しないの?」
「緊張なんてしないわ。わたしはいろんな場所に住んでいたことがあるもの。それと、わたしのことは呼び捨てでかまわないわよ」
「えっ、初対面で呼び捨てってのはちょっと無理があるんだけど……」
「何を言っているの? 人からの親切はしっかりと受け取るものよ」
はぁ、とため息をつきながらおれは少し疑問に思っていたことを聞いてみた。
「……あのさ、もしかして、奏ってお嬢様か何かなの?」
そういうと、よく見破ったわねという顔をしながら奏は答えた。
「そうよ。お母様は大手株式会社の女社長。お父様は世界3位と呼ばれるほどの石油王。わたしはその二人の子供ってわけ。わかったかしら?」
「マジでッ!?」
おれはもう余裕で驚いてしまった。
いや、ほんとに無理ないと思う。
母親は株式会社の女社長で、父親は石油王とかどんな家系だよ!
「てゆうかさ、そんな超お金持ちのお嬢様がなんでこんなところに住もうとしてるの?」
そう、おれは思った。
超お金持ちのお嬢様がなんでこんなアパートになんか住もうとしてるんだろうかって。
そんなお嬢様だったら、ここら辺の空き地にでも新しい家を建てそうなくらいだ。
おれがその疑問について聞いてから、奏は少し間を開けてから答えた。
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