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「……家がつまらなかったのよ。」
「……えっ?」
「家があまりにも退屈だったから、新しいところに住んでみたかったのよ。それで、このアパートに一人で住もうと思ったってわけ」
「……そうなんだ。だけどさ、親はよくそんなわがまま許してくれたね」
「最初は反対されたわ。だけどどうしても新しい環境で生活してみたかったから全力で両親を説得したわ」
「それで親が許してくれたってこと?」
「そんなに簡単にはいかなかったわ。お父様はすごく考えこんでたけどすぐにオーケーしてくれたの。だけど、お母様は何を言ってもだめと言ってきたわ。だからわたしは最後の手段に出たのよ」
「……もしかして、家出でもしたの?」
おれがそう言うと、奏は微笑みながら言った。
「お母様大好きって言いながらハグをしてあげたわ」
「……へ?」
「そしたら喜んでオーケーしてくれたわ」
「……もしかして、最後の手段ってそれ?」
「そうよ。当たり前じゃない」
「お母様そんなんでいいのかよっ!?」
「それから1週間はスキップするくらい上機嫌だったわ」
「お母様に何があったんだよ!? もしかして、それまで無視してたとか?」
「よく分かったわね。だってお母様めんどくさいんだもの。勝手に服を選んで買ってくるわ、中学の時は週に4日は無理やり学校に見学に来たりしてたのよ。だから、めんどくさいから毎回完全無視してたのよ」
「……だからお母様、そんなに喜んだんだな」
つーか、お母様自分の子供を溺愛しすぎだろっ!
服を勝手に買ってくるってのはまぁありそうだけど、週4日学校に見学に来るって異常だろ。
だけど、突然自分のかわいらしい子供に無視されて悩んでたんだろうな…。
だからきっと、突然大好きって言われてハグされたから嬉しかったんだろうな。
お母様、これからも頑張って。
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