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「なんでさっさと帰ろうとするのよっ。また後でって言ったでしょ?」
そう言われて振り返ってみると、
おれの腕を掴んでいたのは麻衣だった。
すっかり忘れていた。
そんなようなこと確かに言われたなぁ。
ここは正直に言って謝るしかない。
「ごめん。すっかり忘れてた」
「ほんとに祐輔はバカなんだから。もしこれで、実は告白するためだったりしたらどうするつもりだったの?」
「泣くね。一ヶ月は毎晩枕を濡らすことになってたね」
そんな予想もしない答えが返ってきたのにびっくりしたのか、
麻衣は少し困った顔をしていた。
「……誰がそんな本気で答えろなんて言ったのよ。冗談に決まってるでしょ」
「ごめんって。でさ、おれになんか話でもあったの?」
「うん。そのことなんだけどね、今日から祐輔アパートに住むんでしょ? きっと他の1年の人だって同じところ住むんだろうから、一緒についていってあげようかなって思ってさ」
「ほんとに麻衣は心配性だな。おれだってもう一人で大丈夫だよ。だから心配しなくていいからさ。じゃあ、おれもう行くからさ」
「……そっか。分かった。
祐輔がそういうなら大丈夫かな。じゃあ、また明日学校でね」
そう笑いながら言うと、麻衣はどこかに行ってしまった。
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