第1話 ~夢の始まり~

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「なんでさっさと帰ろうとするのよっ。また後でって言ったでしょ?」  そう言われて振り返ってみると、 おれの腕を掴んでいたのは麻衣だった。  すっかり忘れていた。 そんなようなこと確かに言われたなぁ。 ここは正直に言って謝るしかない。 「ごめん。すっかり忘れてた」 「ほんとに祐輔はバカなんだから。もしこれで、実は告白するためだったりしたらどうするつもりだったの?」 「泣くね。一ヶ月は毎晩枕を濡らすことになってたね」  そんな予想もしない答えが返ってきたのにびっくりしたのか、 麻衣は少し困った顔をしていた。 「……誰がそんな本気で答えろなんて言ったのよ。冗談に決まってるでしょ」 「ごめんって。でさ、おれになんか話でもあったの?」 「うん。そのことなんだけどね、今日から祐輔アパートに住むんでしょ? きっと他の1年の人だって同じところ住むんだろうから、一緒についていってあげようかなって思ってさ」 「ほんとに麻衣は心配性だな。おれだってもう一人で大丈夫だよ。だから心配しなくていいからさ。じゃあ、おれもう行くからさ」 「……そっか。分かった。 祐輔がそういうなら大丈夫かな。じゃあ、また明日学校でね」  そう笑いながら言うと、麻衣はどこかに行ってしまった。
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