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「先生に、なにすんじゃあ」
タイジが北中の生徒たちに向かって飛び出そうとするのを西本が捕まえて、そのままの勢いで京子のほうに押し出した。
京子は後ろからタイジをしっかり抱きしめた。
タイジはなおも西本に訴えるような視線を投げる。
「せ、先輩……」
「おまえはな、帰ったほうがええんや」
そう言うと、西本はポケットからジャックナイフを取り出して、いきなり北中の面々に突きつけた。
「おまえらなぁ、なめんなよ!」
西本の表情が歪んだようにひきつり、北中のリーダーがバットを振りかざして襲い掛かった。
「やめてええぇ!」
京子の声が室内に響き渡り、それをかき消すように、机や器具が散乱した。
京子は、タイジに覆いかぶさって、身を縮めていた。
暴走する若い魂たちが、その行き場をなくし暴力に姿を変えていた。
何度も怒号とうめき声を聞き、額に血がついた西本の顔が見えた。
あの血は、西本の?
それとも誰かの?
京子は、出口に向かって脱出しなければならないと思いながら、一歩も動けず、気を失いそうになる自分を必死に抑えていた。
まもなくパトカーのサイレンが響いてきた。
京子がこの建物に入る前に連絡した、南中の先生が手配してくれたのに違いない。
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