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だが、家庭裁判所を訪れた京子には、あまりに意外なできごとが待っていた。
証言を聞くという殺風景な面談室に入って待っていたとき、机の上に載っていた黒い革表紙のノートが床にばさりと落ちた。
もともと机の上は、書類で溢れかえっていた。
京子は、冷たいソファーから立ち上がり、元の位置に戻してあげようと手にとった。
えっ……?
ノートから、落ちた紙片。
それは、京子にとってあまりに懐かしいものだった。
桜の押し花の栞……。
すっかり変色し黄ばんでいたが、それはかつて京子の手にあったものだった。
まさか……。
ノートの主の名を確認したときと、ドアが開いたのが同時だった。
お互いを確認するまでにそれほど時間はかからなかった。
京子が栞をあげた相手が、十八年の歳月を経て、目の前に立っていた。
今は家庭裁判所の調査官となっていた、小島雅人であった。
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